魔王領運営ゲームの周回要素とルート分岐を考える|1周目で全部見せない制作記その11

魔王領運営ゲームの周回要素とルート分岐を考える|1周目で全部見せない制作記その11

前回は、魔王領運営ゲームの妖精と古い神格について整理した。

人間、魔物、教会、捕虜、保護対象、住人、職能キャラ。
そこに妖精や古い神格の気配が混ざることで、魔王領はただの地下拠点ではなく、少し不思議な居場所へ広がっていく。

今回は、その先にある周回要素とルート分岐について考えていく。

このゲームは、1回遊んで終わるタイプじゃない。
むしろ、1周目では分からなかったことが、2周目以降に少しずつ見えてくる形にしたい。

最初はただの遠征に見えた場所。
ただの保護イベントに見えた出会い。
よく分からなかったフォムの反応。
クロイルが何も言わなかった違和感。

そういうものが、2周目以降に「あれ、これ早めに動けば変わるのでは?」と分かってくる。

この構造が作れれば、周回する理由が強くなると思う。

1周目で全部説明しない

まず大事なのは、1周目で全部説明しないこと。

ゲームを作る側としては、設定を作るほど説明したくなる。

このキャラにはこういう背景があります。
この遠征先にはこういう真相があります。
このアイテムは後でこういう意味になります。

そういう説明を入れたくなる。

でも、最初から全部を説明すると、プレイヤーが自分で気づく余地がなくなる。

特に今回のゲームでは、違和感や後から効く伏線を大事にしたい。
だから、1周目では分からないままでいいことがある。

フォムがなぜ反応したのか。
廃村の聖印らしきものが何だったのか。
旧鉱山の奥に何があるのか。
クロイルがどこまで知っていて、どこから先は知らないのか。

そういうものは、いきなり答えを出さない。

1周目では、プレイヤーが「なんか変だな」と思うくらいでいい。

周回でプレイヤー知識だけが増える

周回ゲームで面白いのは、キャラではなくプレイヤーの知識が増えていくところ。

主人公は、その周回ではまだ知らない。
クロイルも、観測していない情報は知らない。

でもプレイヤーは、前の周回で見ている。
だから、次の周回では違う動きができる。

たとえば、1周目では廃村へ行くのが遅れて、助けられなかった人物がいる。
でも2周目では、プレイヤーだけが「早く行かないとまずい」と知っている。

主人公やクロイルはまだ知らない。
だから、ゲーム内のキャラが急に警告するのではなく、プレイヤーが自分の判断で急ぐ。

この形がいい。

プレイヤー知識と、主人公やクロイルの知識は分けたい。
周回知識を使って動くのはプレイヤー。
でもゲーム内の人物は、その周回で観測していないことを知らない。

ここを守ると、没入感が出ると思う。

クロイルは観測済みのことしか言わない

このゲームで、側近クロイルは便利な存在になる。

施設管理もする。
防衛の助言もする。
30日後の方針提示もする。

だからこそ、何でも知っているキャラにはしたくない。

クロイルが未観測の危機まで全部教えてくれると、周回の意味が薄くなる。
たとえば、まだ廃村に行っていないのに、クロイルが「廃村に急ぐべきです」と言ってしまう。

これだと、プレイヤーが気づく余地がない。
それはただの誘導になる。

だから、クロイルは観測済みの情報だけを補足する。

廃村に一度行って、誰かの衰弱を見た。
その後なら、クロイルは「放置すれば危険です」と言える。

でも、まだ見ていないものについては言えない。

クロイルは有能だけど、メタ的な攻略ナビではない。
側近として、見たもの、聞いたもの、記録したものから判断する。

この制限があるから、プレイヤーの周回知識が意味を持つ。

未観測イベントは世界の裏で進む

もうひとつ大事なのは、主人公が見ていない場所でも世界が進むこと。
プレイヤーが黒霧の森ばかり行っていれば、廃村の出来事は止まっているわけではない。

旧鉱山を放置していれば、そこに関わる別の勢力が動くかもしれない。
捕虜や保護対象を放置すれば、内部状態が変わる。

そういうふうに、未観測の場所でも少しずつ進行する。

ただし、全部を時限イベントにするつもりはない。

毎日あれもこれも急げと言われると、遊びにくい。
だから、不可逆分岐は少数に絞りたい。

重要なキャラや大きな出来事だけ、時間経過で変わる。
それ以外は、遅れても別の結果になる程度にする。

このバランスが大事だと思う。

少し理不尽さはあっていい。
でも、理不尽すぎるとプレイヤーが納得できない。

失敗や放置の結果は、後から痕跡で納得できる形にしたい。

時限分岐は4タイプに分ける

時限分岐は、ざっくり4タイプに分けられる。

  • 日常進行型
  • 関係変化型
  • 状態悪化型
  • 不可逆分岐型

日常進行型は、時間が経つと小さな会話や施設内の様子が変わるもの。
関係変化型は、保護対象や捕虜、職能キャラとの関係が少しずつ変わるもの。
状態悪化型は、病気、負傷、衰弱、環境悪化などが進むもの。
不可逆分岐型は、放置すると救えない、会えない、仲間にならない、失踪する、といった大きな変化。

この中で一番扱いに注意が必要なのは、不可逆分岐型。
強すぎると取り返しがつかないストレスになる。

でも、少なすぎると世界が止まって見える。

だからDタイプ、つまり不可逆分岐型は少数に絞る。
本当に後から意味があるキャラやイベントだけに使う。

この方針がよさそう。

既視感表示は、知っている選択肢だけに出す

周回要素を入れるなら、既視感表示も考えたい。

ただし、これも出し方が難しい。
最初から全部の選択肢に「既視感」と出ると、かなりメタっぽい。

だから、既視感表示は、プレイヤーが過去の周回で実際に選んだことがある選択肢にだけ出すのがいいと思っている。

まだ選んだことがない選択肢には出さない。
一度選んだことがある選択肢には、少しだけ印がつく。
「前にも似た選択をした気がする」くらいの表示。

これなら、プレイヤーは過去の自分の行動を思い出せる。

でも、未来の答えを全部教えられるわけではない。
既視感は攻略情報ではなく、記憶の手触りとして出したい。

選んだことがある。
でも、結果が同じとは限らない。

このくらいの距離感がいい。

用語辞典は、出会った言葉だけ登録する

用語辞典も入れたい。

ただし、これも最初から全部見える形にはしない。

白冠教会
白冠手印
偽聖印
黒霧
魔王核
旧鉱山
妖精

こういう用語は、ゲームを進める中で少しずつ出てくる。
出会った用語だけ辞典に登録される。

そして、辞典に書かれる内容も、その時点で主人公側が知っている範囲だけにする。

未発見の真相は書かない。
裏設定も書かない。

後から情報が増えたら、辞典の内容が少し更新される。

この形なら、用語辞典はネタバレ集ではなく、プレイヤーの調査記録になる。

世界観が大きいゲームでは、辞典はかなり便利。
でも、便利すぎると説明書になってしまう。

だから、辞典も「その周回で見たもの」「これまでに知ったこと」に限定する方がよさそう。

ルート名は直接出さない方が自然

ルート分岐についても、ゲーム内ではルート名を直接出さない方が自然だと思っている。

記事では分かりやすくするために、財宝防衛ルート、教会調査ルート、捕虜運用ルートのように書いている。
でも、ゲーム内で「財宝防衛ルートに入りました」と表示されると、少し急にゲームっぽくなる。

本当は、プレイヤーの行動の結果として、自然に方向が見えてくる方がいい。

財宝を集めて守りを固めていたら、財宝防衛寄りになる。
廃村や聖印の違和感を追っていたら、教会調査寄りになる。
捕虜を多く抱えて再契約を進めていたら、捕虜運用寄りになる。
黒霧の森や魔物卵を重視していたら、魔物強化寄りになる。

プレイヤーが後から「あ、自分の魔王領はこっちに進んでいるんだな」と分かるくらいがいい。

ルート名は、制作側の整理には必要。
でも、ゲーム内ではクロイルの報告や施設の変化、住人の反応で見せたい。

30日後分岐は、周回でも見え方が変わる

その5で、30日後分岐について整理した。

30日後分岐は、固定ルート選択ではなく、クロイルが現在の魔王領の状態を分析して方針を提示する場面。

この仕組みは、周回とかなり相性がいい。

1周目では、クロイルの提案を見て「なるほど、今はこの方向が進みやすいのか」と思う。
2周目では、プレイヤーが「この提案を出すためには、序盤でこう動けばいい」と考えられる。

さらに慣れてくると、あえて別の提案を出すために序盤の行動を変えられる。

黒霧の森を多めに回る。
旧鉱山を優先する。
廃村を早めに見る。
財宝をあえて増やす。
捕虜を取らずに保護を重視する。

こういう選び方ができる。

30日後分岐は、1周目では案内。
2周目以降では、狙って組み立てる目標になる。

この変化が楽しめる要素にできたらいい。

トロフィーは大きな到達点に絞る

周回要素を考えると、トロフィーや実績も入れたくなる。

ただし、選択肢ごとに細かくトロフィーを作るのはやめたい。
択肢を1つ選ぶたびにトロフィーが出ると、少し軽くなる。

このゲームでトロフィーにしたいのは、もっと大きな到達点。

物語上の到達点。
周回で狙いたくなる結果。
プレイスタイルが見える達成。
大きな救済や失敗。
後から振り返る価値がある分岐。

こういうものに絞りたい。

たとえば、「特定の人物を救えた」「特定の方針で30日後を迎えた」「大きな防衛戦を被害少なく乗り切った」など。

トロフィーは、ただの収集要素ではなく、その周回で何をしたのかを振り返る目印にしたい。

失敗も周回の情報になる

周回ゲームでは、失敗の扱いも大事。
失敗したら終わり、ではなく、失敗したことで次に何をするべきか分かるようにしたい。

保護対象を助けられなかった。
財宝を奪われた。
防衛が間に合わなかった。
捕虜が逃げた。
教会の痕跡を見落とした。

こういう失敗は、その周回では痛い。
でも、2周目以降の判断材料になる。

次は早めに廃村へ行こう。
次は旧鉱山を優先して防衛を固めよう。
次は財宝を集めすぎる前に宝物庫を作ろう。
次は保護小屋と療養室を先に作ろう。

そう思える失敗なら、周回の意味が出る。

ただ理不尽に潰されるのではなく、失敗が次の仮説になる。

遊ぶ人が自然にそう考えられるようにしたい。

周回で物語の見え方が変わる

周回要素は、ゲームシステムだけでなく物語にも効く。

1周目では、ただの変な反応に見えたもの。
2周目では、意味が分かって少し怖くなるもの。
3周目では、別の選択を試したくなるもの。

こういう見え方の変化を作りたい。

たとえば、フォムの反応。
廃村の空気。
クロイルの言い方。
オシーンの距離の取り方。
白冠教会の下級教会員の善意。
旧鉱山の変な加工跡。
妖精の意味不明な一言。

1周目では流してしまう。
でも、後から見ると意味が変わる。

こういう要素があると、2周目以降に同じ場面を見ても退屈しにくい。

むしろ、「ここ、そういう意味だったのか」と思える。

この作り方で驚いてもらえるようなつくりにしたい。

ここまでで見えてきたこと

周回要素とルート分岐を考えたことで、このゲームの遊び方がかなりはっきりしてきた。

遠征で素材を拾う。
拠点を育てる。
襲撃で試される。
30日後に方針が見える。
キャラや施設や教会や妖精の違和感が積み上がる。

そして、1周目で分からなかったことが、2周目以降に効いてくる。

この流れがあると、単なる分岐ゲームではなくなる。
プレイヤー自身が、魔王領の過去周回を材料にして次の判断を変えていく。

主人公やクロイルは知らない。
でもプレイヤーは知っている。

その差が、周回ゲームとしての面白さになる。

次にやること

次は、主人公とクロイルの関係をもう少し整理してもいいかもしれない。
クロイルは単なるチュートリアル係ではなく、魔王領の管理者であり、先代や主人公との関係を持つ側近。

主人公は、前世記憶を持っているけれど、現世の人生も持っている若い魔王。
この2人の距離感をちゃんと作らないと、導入や序盤の会話が不自然になりそう。

クロイルはどこまで主人公を導くのか。
どこから先は主人公自身に選ばせるのか。
主人公は、クロイルをどこまで信頼しているのか。

ここを整理すると、導入シーンや日常会話が書きやすくなってくる。

まとめ

今回は、AIと一緒に企画している魔王領運営ゲームの制作記録その11として、周回要素とルート分岐について整理した。

1周目では、すべてを説明しない。
プレイヤーは、分からないまま選び、失敗し、違和感を拾う。

2周目以降は、その知識を使って早く動いたり、別の方針を試したりできる。
ただし、主人公やクロイルが未観測の情報を急に知るわけではない。

クロイルが言えるのは、観測済みの情報だけ。
この制限があるから、プレイヤー知識が意味を持つ。

既視感表示は、過去に選んだことがある選択肢にだけ出す。

用語辞典は、出会った言葉だけ登録する。

ルート名は、ゲーム内では直接出さず、行動や報告や施設の変化で見せる。

最初からルートを選ぶのではなく、遊んだ結果として魔王領の性格が立ち上がる。

この形にできれば、このゲームらしい周回構造にできる。

次回は、主人公とクロイルの関係について整理していく予定。

AIと魔王領運営ゲームの企画を作り始めた|巣作り×ローグライト制作記その1
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