魔王領運営ゲームの主人公とクロイルを考える|若い魔王と側近の距離感 制作記その12
前回は、魔王領運営ゲームの周回要素とルート分岐について整理した。
1周目では全部を説明しない。
2周目以降に、プレイヤーだけが前の周回の知識を持っている。
ただし、主人公やクロイルが未観測の情報まで急に知るわけではない。
この制限があるから、周回した時にプレイヤーの判断が効いてくる。
今回は、その流れを受けて、主人公とクロイルの関係について整理していく。
クロイルは、便利なキャラになっている。
領地運営を手伝う。
遠征先を提案する。
防衛状況を報告する。
30日後には、魔王領の状態を分析して方針を出す。
でも、便利すぎるとゲームが弱くなる。
クロイルが何でも知っていて、何でも正解を教えてくれるなら、プレイヤーが考える意味がなくなる。
だからクロイルは、有能だけど万能ではない側近にしたい。
そして主人公は、強大な魔王ではなく、まだ弱い若い魔王。
この2人の距離感をちゃんと作ることが、導入や序盤の会話では大事になりそう。
主人公は最初から完成された魔王ではない
まず主人公について。
このゲームの主人公は、最初から強大な魔王ではない。
魔王城を持っているわけでもない。
大量の配下がいるわけでもない。
世界征服の野望を堂々と掲げているわけでもない。
むしろ、最初は弱い。
自分の領地すらまともに守れない。
旧領への接続にも失敗する。
退避先として小さな洞穴を初期拠点にする。
そこから、少しずつ魔王領を作っていく。
この弱さが、重要だと思っている。
最初から強い魔王だと、洞穴から始める理由が薄くなる。
捕虜や保護対象や住人をどう扱うか悩む必要も薄くなる。
でも、主人公がまだ未熟で、守れるものが少ないからこそ、選択に意味が出る。
誰を助けるのか。
何を守るのか。
どこまで支配するのか。
どこから先は強制しないのか。
そういう判断を積み重ねて、自分なりの魔王領を作っていく。
転生者だが、現世の人生もある
主人公には前世の記憶がある。
ただし、「現代人が異世界の身体を乗っ取った」形じゃない。
主人公は、この世界で生きてきた人生を持っている。
母親がいて、先代がいて、先々代にかわいがられていた記憶がある。
そこに、前世の現代知識や感覚が混ざっている。
つまり、現世人格に前世記憶が混入している形。
この設定にした理由は、後半の感情線をちゃんと成立させたいから。
母親や先代や先々代と関わる時、主人公にこの世界での感情がないと薄くなる。
ただの現代人が「設定上の母親」と再会するだけでは、あまり意味が乗らない。
でも、主人公がこの世界で生きてきた魔王家の子であれば、家族への感情が残る。
クロイルとの関係も同じ。
クロイルは、ただ初対面の便利NPCではない。
主人公の家や先代に関わっている存在。
だから、主人公はクロイルを完全な他人として見ない。
ただし、全部を無条件に信じ切っているわけでもない。
この微妙な距離感が必要になる。
主人公の口調は短く、説明しすぎない
主人公の口調も大事。
主人公には、説明台詞をあまり言わせたくない。
ゲーム制作では、どうしても主人公にシステムや世界観を説明させたくなる。
でも、それをやると急に不自然になる。
主人公は、短い非敬語くらいが合う。
たとえば、こういう感じ。
「分かった」
「どうすればいい」
「強制はしないよ」
「信用しろとは言わない」
このくらい。
急に全部を理解したような名推理はしない。
過度に英雄的なことも言わない。
システム説明のために、プレイヤーへ向けた不自然な台詞も言わせない。
主人公は、まだ弱い。
でも、自分で選ぶ。
そこが大事。
クロイルは先代の右腕であり、今は主人公の側近
クロイルは、主人公の側近。
ただし、ただの案内役ではない。
もともとは先代の右腕に近い立場だったキャラとして考えている。
だから、主人公よりも知っていることは多い。
魔王領の運営も分かる。
施設の配置も分かる。
防衛も、物資管理も、遠征候補もある程度整理できる。
でも、主人公より上に立つ存在ではない。
ここが難しい。
クロイルが有能すぎると、主人公がただ指示を聞くだけになってしまう。
逆にクロイルが無能だと、側近としての説得力がなくなる。
だから、クロイルは有能だけど、最終判断は主人公に残す。
提案はする。
整える。
報告する。
でも、選ぶのは主人公。
この役割分担にしたい。
クロイルは便利な攻略ナビではない
クロイルで一番気をつけたいのは、便利な攻略ナビにしないこと。
クロイルが何でも知っていて、全部の危険を先回りして教えてくれると、ゲームとしてつまらない。
廃村へ行く前に「早く行かないと誰かが死にます」と言う。
偽聖印を見る前に「これは偽物です」と言う。
旧鉱山に入る前に「奥に重要なものがあります」と言う。
こういうことをやると、プレイヤーが発見する楽しさが消える。
だからクロイルは、観測済みの情報だけを補足する。
見たもの。
聞いたもの。
持ち帰ったもの。
報告を受けたもの。
それらを整理して、現実的な方針として提示する。
まだ見ていないもの、まだ観測していない危機については、メタ的に警告しない。
ここは周回要素とも直結する。
プレイヤーは前の周回で知っている。
でも、クロイルはその周回で観測していないことは知らない。
このズレが、2周目以降の面白さになる。
クロイルの提案は最大3つくらいがいい
クロイルは、プレイヤーに選択肢を出す役でもある。
ただし、提案を出しすぎるとテンポが悪くなる。
10個も提案されると、プレイヤーは迷う。
だから、クロイルの提案は最大3つくらいがちょうどよさそう。
たとえば、30日後の方針提示ならこうなる。
- 財宝防衛を優先する
- 旧鉱山を深掘りして罠工房を強化する
- 廃村の聖印の違和感を調査する
別の周回なら、こうなるかもしれない。
- 黒霧の森を進めて魔物戦力を増やす
- 保護対象のために療養室を整える
- 盗賊の情報源を追う
大事なのは、クロイルがルート名を直接言わないこと。
「財宝防衛ルートに入りました」とは言わない。
「現状では財宝の蓄積に対して防衛設備が不足しています」と言う。
その方が自然。
クロイルは、ゲーム内の人物として報告する。
制作側の分類をそのまま口に出さない。
クロイルは自動運営を担当する
このゲームでは、クロイルの自動運営も重要になる。
魔王領には、施設、人口、捕虜、保護対象、食料、薬草、遠征、罠、防衛など、いろいろな要素がある。
これを全部プレイヤーに細かく管理させると、めんどうに感じる。
だから、ライトに遊びたい人は方針だけ選べるようにしたい。
防衛優先
生活安定優先
研究優先
保護優先
収益優先
捕虜管理優先
低脅威・隠密優先
バランス運営
こういう方針を選ぶと、クロイルが無難に調整する。
ただし、クロイルの自動運営はあくまで無難。
隠しイベントを狙うような尖った配置はしない。
特殊な会話を見たい。
変な組み合わせを試したい。
効率を突き詰めたい。
そういう場合は、プレイヤーが手動で触る。
クロイルは土台を整える。
プレイヤーは方針や尖りを決める。
この形で遊べるようにしたい。
クロイルの忠誠は、主人公個人だけではない
クロイルの忠誠は、主人公個人だけに向いているわけではなさそう。
もちろん、主人公を守る。
でもそれは、先代との誓約や、魔王領を守る役目ともつながっている。
ここについては少し複雑にしたいと思っている。
クロイルは、ただ主人公に甘い側近ではない。
主人公が危ない判断をすれば止める。
魔王領を壊すような選択なら警告する。
でも、最終的には主人公が選んだ方針を実務として通す。
この関係は、親子でも、主従でも、友人でも、先生と生徒でもない。
近いのは、先代から引き継がれた誓約を持つ管理者と、まだ未熟な継承者の関係。
だから、クロイルは優しいだけではない。
時には冷たい。
必要なら現実的な損害も言う。
でも、主人公の選択を完全に奪うわけではない。
この微妙な距離感が大事。
主人公はクロイルに守られるだけではない
主人公も、クロイルに守られるだけの存在にはしたくない。
最初は弱い。
分からないことも多い。
でも、主人公には主人公なりの判断がある。
たとえば、クロイルが効率を考えて「捕虜を労働力として使うべき」と提案する場面があるかもしれない。
でも主人公は、捕虜と保護対象を同じ扱いにはしないと決めるかもしれない。
クロイルが防衛上は危険だと見ても、主人公は負傷者を外に寝かせないことを選ぶかもしれない。
クロイルが「この判断は損です」と言っても、主人公は「それでもこっちにする」と言うかもしれない。
ここが主人公の芯になる。
主人公は、魔王として完璧ではない。
でも、強制しないことや、奪われない場所を作ることにはこだわる。
クロイルは、その非効率を見ながら、少しずつ主人公の魔王領を理解していく。
この変化が出せると、2人の関係は良くなっていく。
クロイルは感情を説明しすぎない
クロイルにも、感情はある。
先代への思い。
主人公を守る役目。
旧領へ接続できなかったことへの焦り。
若い魔王を小洞穴から始めさせることへの負い目。
そういうものはありそう。
でも、それを全部説明させると少し押しつけがましい。
クロイルは、感情を長々と語るより、行動で出したい。
主人公が疲れている時に、先に灯を用意している。
ミアハの療養のために、黒霧灯を作れる。
オシーンの観測を、残敵数UIのように整理する。
保護対象がいる時に、外に寝かせないための最低条件を提示する。
こういう形で、クロイルの思いを出す。
「私はあなたを心配しています」と直接言わせるより、必要なものを用意している方がクロイルらしい。
2人の会話は、説明ではなく判断で見せる
主人公とクロイルの会話は、設定説明ではなく、判断の場面で見せていく。
たとえば、廃村から保護対象を連れて帰る時。
クロイルは条件を言う。
「宿泊施設がありません」
「外に寝かせるなら、保護とは言えません」
「最低でもベッドと灯が必要です」
主人公は選ぶ。
「用意する」
「今から戻る」
「連れて帰るだけじゃ駄目なんだな」
こういう会話なら、施設条件の説明にもなるし、魔王領の価値観も出せる。
クロイルが説明するのは、ルールではなく現実。
主人公が返すのは、感想ではなく判断。
この形が合っている。
クロイルは主人公を試しているわけではない
ここで注意したいのは、クロイルを主人公を試すキャラにしすぎないこと。
オシーンのように、相手の行動を観察して信頼するキャラはいる。
でもクロイルは、主人公を採点する立場ではない。
クロイルは、主人公を守る側。
ただし、主人公の方針を見ながら、その方針に合う運営へ調整していく。
主人公が保護を重視するなら、保護に必要な施設を提案する。
防衛を重視するなら、防衛施設を優先する。
財宝を集めるなら、宝物庫と隠匿を整える。
捕虜を増やすなら、管理施設を整える。
クロイルは、主人公を試すのではなく、主人公が選んだ魔王領を現実に落とす。
これがクロイルの重要な役割。
関係性の変化は、信頼度だけにしない
主人公とクロイルの関係を、単純な信頼度だけで管理するのは少し弱い。
クロイルは最初から主人公を裏切るようなキャラではない。
だから、「好感度が低いと手伝わない」という形には合わない。
むしろ、変わるべきなのは会話の温度や提案の踏み込み方。
最初は、必要最低限の報告。
少し進むと、主人公の方針を踏まえた提案。
さらに進むと、主人公が言う前に必要な準備をしている。
終盤では、主人公が選びそうな危険な道も理解したうえで、撤退線や代替案を用意する。
こういう変化が合いそう。
クロイルは、感情で急にデレるキャラではない。
でも、主人公の選択を見て、運営の組み方が変わっていく。
それが関係性の変化になる。
クロイルがいることで、主人公の未熟さを出せる
クロイルがいると、主人公の未熟さも出しやすい。
主人公が全部を一人で判断すると、急に有能すぎるように見えてしまう。
逆に何も分からないと、ただの無力な主人公になる。
クロイルがいることで、その中間が作れる。
主人公は知らない。
でもクロイルが、魔王領に起こったことの情報を整理する。
主人公は迷う。
でもクロイルが、現実的な選択肢を最大3つくらいに絞る。
主人公は決める。
クロイルが実務へ落とす。
この流れなら、主人公は未熟でも無能に見えない。
クロイルは有能でも、主人公を食わない。
このバランスが大事。
ここまでで見えてきたこと
主人公とクロイルの関係を考えたことで、序盤の会話の作り方がなんとなく見えてきた。
主人公は、弱い若い魔王。
でも、ただ守られるだけではない。
クロイルは、有能な側近。
でも、便利な攻略ナビではない。
クロイルが整理し、主人公が選ぶ。
クロイルが現実を提示し、主人公が方針を決める。
クロイルが無難に運営し、プレイヤーが尖った判断をする。
この役割分担ができれば、ゲームとしても物語としても扱いやすくなる。
次にやること
次は、導入シーンそのものをもう少し具体的に書いてもいいかもしれない。
小洞穴に退避する場面。
旧領へ接続できなかった場面。
クロイルが主人公を守るために、冷静に退避先を決める場面。
主人公が、自分の弱さと前世記憶の違和感を抱えたまま、小洞穴を初期拠点として受け入れる場面。
このあたりをちゃんと書けると、ゲームの冒頭が見えてくる。
ただし、ここでも説明しすぎない。
「なぜ小洞穴から始まるのか」を、設定説明ではなく、状況と会話で見せたい。
ここは次に詰めたいところ。
まとめ
今回は、AIと一緒に企画している魔王領運営ゲームの制作記録その12として、主人公とクロイルの関係について整理した。
主人公は、最初から完成された強大な魔王ではない。
若く、弱く、まだ自分の領地も守れない。
でも、支配よりも「奪われない場所」を作ることに向かっていく。
クロイルは、先代の右腕であり、今は主人公の側近。
領地運営を支え、観測済み情報を整理し、方針を提案する。
ただし、未観測の危機や真相をメタ的に教える便利ナビにはしない。
クロイルが整理し、主人公が選ぶ。
この距離感が大事。
主人公が未熟だからこそ、クロイルの支えが必要になる。
でも、クロイルが万能ではないからこそ、プレイヤーの判断が意味を持つ。
この2人の関係をうまく作れれば、導入から序盤の魔王領づくりまでかなり自然につながりそう。
次回は、導入シーンや小洞穴スタートの見せ方を整理していく予定。
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