魔王領運営ゲームの導入シーンを考える|小洞穴から始まる理由 制作記その13

魔王領運営ゲームの導入シーンを考える|小洞穴から始まる理由 制作記その13

前回は、魔王領運営ゲームの主人公とクロイルの関係について整理した。

主人公は、最初から完成された強大な魔王ではない。
若く、弱く、自分の領地すらまだまともに守れない。

クロイルは、その主人公を支える側近。
ただし、何でも知っている便利な攻略ナビではない。
観測済みの情報を整理し、現実的な選択肢を出す。

でも、最後に選ぶのは主人公。

今回は、その関係を踏まえて、導入シーンと小洞穴スタートについて整理していく。


ゲームの冒頭で雰囲気が決まる。

ここで、主人公がどういう状態なのか。
クロイルがどういう距離感で支えるのか。
なぜ最初から魔王城ではなく、小さな洞穴から始まるのか。

そこを自然に見せていきたい。

設定説明を長く並べるのではなく、状況と会話と最初の操作で分かる形にしたいと思っている。

最初から魔王城を持たせない

まずは、主人公に最初から立派な魔王城を持たせないこと。

魔王ものなら、巨大な城、広い玉座の間、大量の配下から始めることもできる。

でも、今回のゲームでやりたいのは、そこじゃない。

小さな場所から始まる。
入口を守る。
財宝を隠す。
罠を置く。
遠征で素材を拾う。
保護対象を外に寝かせないために部屋を作る。

そうやって、必要に迫られて魔王領が育っていく。

だから、最初から完成された拠点があるよりは、育てていくために新しい拠点を作り始めるようにしたい。

最初は不便でいい。
狭くていい。
守りにくくていい。

むしろ、その不便さがゲームの出発点になる。

小洞穴スタートは、単なる縛りプレイではない。
このゲームの巣作り感を出すための入口になる。

旧領へ接続できないところから始める

導入では、本来なら先々代や先代に関わる旧領へ接続するはずだった、という流れにしたい。

主人公は、完全な無名の魔王ではない。
魔王ごとに家の流れがあり、先々代や先代の記憶もある。

クロイルも、その旧領へ主人公を戻そうとする。

でも、うまくいかない。
もともと住んでいた領の魔力が異常に薄い。
主人公の魔王核では定着できない。

そのため、クロイルは退避先として小さな洞穴を選ぶ。
この流れにすることで、小洞穴スタートにできる。

ただ「ゲームだから弱い拠点から始めます」ではない。

本来あるはずの場所へ戻れない。
だから、ひとまず生き残れる場所へ退避する。

この失敗が、導入の最初の違和感になる。

旧領接続失敗は、チュートリアル都合ではなく世界の異常

旧領へ接続できない理由は、序盤では明かさない。

クロイルにも分かっていない。
もちろん主人公にも分からない。

ただ、異常であることだけは分かる。

魔力が薄い。
残響が弱い。
道がつながらない。
クロイルの声に、少しだけ焦りが混ざる。

このくらいで十分。
ここで長々と設定説明をすると、冒頭がややこしくなる。

でも、何も説明しないと、ただの都合に見える。
だから、導入では「本来なら戻れるはずだったのに、戻れなかった」という事実だけがわかるようにする。

なぜ戻れないのかは、後で分かればいい。
最初のプレイヤーに必要なのは、旧領の真相ではなく、今ここで生き残る理由。

主人公は知らない世界に来た現代人ではない

導入で気をつけたいのは、主人公を「知らない世界に突然来た現代人」として書かないこと。

主人公には前世の記憶がある。
でも、現世での人生もある。

この世界の黒霧の匂いも知っている。
クロイルの声にも聞き覚えがある。
先々代の手や声を、断片的に覚えている。

母親の温度のようなものも、完全ではないが残っている。
そこに前世の記憶が混ざっている。

だから導入では、「何も知らない世界に来た」ではなく、「知っているはずの世界が、前世記憶のせいで二重に見える」感じになる。

この方が、後半の家族や先代、先々代との感情線にもつながる。

主人公は、異世界の観光客ではない。
この世界に生きてきた若い魔王。

そこに、別の人生の記憶が混ざっている。
この違和感を、最初の導入で少しだけ出せたらいい。

前世記憶は便利知識より、違和感として出す

転生者設定を入れると、前世知識で一気に有利になる展開もできる。
ただ、このゲームでは、そこを前面に出しすぎるつもりはない。

もちろん、現代知識が後で運営や発想に効く場面はあっていい。
ただ、導入では便利知識よりも、違和感として出す。

たとえば、洞穴の湿った匂いを知っている気がする。
でも、同時に前世の記憶では、それを洞穴としてではなく別のものと比べてしまう。

クロイルの報告が、魔王領の管理報告として聞こえる。
でも、前世の記憶では、それを業務報告のようにも感じてしまう。

黒霧を見て、この世界の危険だと分かる。
でも、どこかで煙や排気や汚染のイメージも重なる。

こういう二重感。

前世記憶は、主人公を最初から万能にするものではなく、世界の見え方を少しズラすものにしたい。

クロイルは焦っていても、表面上は冷静沈着

旧領への接続に失敗した時、クロイルはかなり焦るはず。

ただし、表面上は冷静沈着。
クロイルは側近であり、管理者であり、主人公を守る役目を持つ。

だから、主人公の前で取り乱しすぎない。

まず状況を整理する。
接続不可。
魔力定着失敗。
退避先の確保。
現在位置の安全確認。
入口の防衛。
物資の確認。

こういう順で動く。
でも、短い言葉や間で、少しだけ異常さが見える。

「旧領の残響が……薄すぎます」

「この状態では、定着できません」

「退避します」

このくらい。

クロイルが全部を説明する必要はない。
むしろ、説明しきれないからこそ、危機感が出る。

小洞穴は仮避難場所であり、最初の魔王領になる

主人公にとって、小洞穴は最初から理想の領地ではない。

仮避難場所。

本来いるべき場所に戻れなかったから、ひとまず逃げ込んだ場所。
でも、クロイルにとっては、そこを初期魔王領として整えていくしかない。

ここに認識のズレがある。

主人公は「ここに長くいるつもりはない」と思う。
クロイルは「ここを守れる形にしなければ生き残れない」と判断する。

主人公が「仮の場所だろ」と言う。
クロイルが「仮であっても、入口は塞がねばなりません」と返す。

主人公が「財宝を置く場所もない」と言う。
クロイルが「ならば、置く場所を作ります」と返す。

こうして、必要に迫られて最初の施設が増えていく。
この流れが巣作りゲームとして自然につながる。

最初に見せるべきもの

導入で最初に見せるべきものは、あまり多くない。
むしろ、絞った方がいい。

見せたいのは、次のあたり。

  • 旧領への接続失敗
  • クロイルの退避判断
  • 小洞穴への到着
  • 主人公の弱さ
  • 前世記憶による二重感
  • 入口を守る必要
  • 財宝を隠す必要
  • 遠征に出る理由

これだけ分かれば、ゲームは始められる。

白冠教会の裏構造。
母親の真相。
先代の現在。
旧領の異常の理由。
フォムの深い正体。

そういうものは、出さなくていい。

導入で必要なのは、世界の全体説明ではなく、「今プレイヤーが何をすればいいか」が分かること。

最初の操作は、洞穴を守ることから始めたい

導入直後の最初の操作は、遠征よりも先に、洞穴の最低限の確認から始めたい。

入口はどこか。
財宝をどこに置くか。
休む場所はあるか。
外から見つかりやすいか。
罠を置ける場所はあるか。

このあたりを確認する。
いきなり大きな建築をするのではなく、まずは最低限。

入口に簡易罠を置く。
奥に財宝を寄せる。
灯を置く。
休める場所を決める。

その後で、遠征先が開く。

黒霧の森。
灰鉱村跡。
旧鉱山。

この3つを最初の遠征候補として見せる。

こうすれば、プレイヤーは「拠点を守るために外へ出る」という流れを自然に理解できる。

チュートリアルはクロイルの報告で済ませる

導入のチュートリアルは、なるべく自然にしたい。

画面に説明文を大量に出すより、クロイルの報告として出した方がわかりやすい。

たとえば、こういう形。

「入口は一つ。防衛には向いていますが、塞がれれば逃げ場がありません」

「財宝を置くなら、入口から離した方が安全です」

「現時点で使える人員は限られています。遠征は少人数で行うべきです」

「黒霧の森、灰鉱村跡、旧鉱山。現状で到達可能なのはこの三か所です」

これなら、ゲームの説明にもなるし、クロイルの役割も出る。

ただし、ここでも説明しすぎない。
クロイルは、プレイヤー向けのチュートリアル係ではなく、主人公に現状を報告している側近。

その温度を保ちたい。

主人公の返答は短くする

クロイルが状況を整理するなら、主人公はどう返すか。

ここで主人公が長々と説明すると不自然になる。
主人公はまだ混乱している。

旧領へ戻れず、小洞穴へ逃げ込んだばかり。
前世記憶も混ざっている。

だから返答は短い方がいい。

「分かった」

「ここでやるしかないか」

「入口を見せて」

「財宝は奥だな」

「遠征に出る理由は分かった」

このくらい。

主人公は、全部を理解した賢い説明役ではない。
状況を受け止めながら、必要な判断をする若い魔王。

この関係性を見せていきたい。

導入の会話案

まだ仮だけど、導入の温度としてはこんな感じが合いそう。

クロイル:「旧領への接続、失敗しました」

主人公:「失敗?」

クロイル:「残響が薄すぎます。魔王核が定着できません」

主人公:「そんなこと、あるのか」

クロイル:「本来はありません」

主人公:「……なら、ここは?」

クロイル:「退避先です。小洞穴ですが、入口は一つ。守れます」

主人公:「守れます、か」

クロイル:「守らなければ、終わります」

主人公:「分かった。まず入口を見よう」

このくらい。

旧領の異常は出す。
でも理由は出さない。
主人公の弱さも出す。
でも情けなくしすぎない。
クロイルの有能さも出す。

でも万能にはしない。

最初の遠征候補につなげる

小洞穴を確認した後、最初の遠征候補へつなげる。

黒霧の森。
灰鉱村跡。
旧鉱山。

この3つは、それぞれ役割が違う。

黒霧の森は、木材、薬草、魔物素材、魔物卵、黒霧結晶など。
灰鉱村跡は、人間側情報、保護対象、白冠の痕跡、ミアンたちとの出会い。
旧鉱山は、鉱石、魔石、罠素材、石壁、罠工房、防衛強化。

導入では、それぞれの詳細を説明しすぎなくていい。

クロイルが短く言うくらいで十分。

「木材と薬草なら黒霧の森」

「人の痕跡を追うなら灰鉱村跡」

「防衛素材なら旧鉱山」

こういう出し方なら、プレイヤーは最初の方針を選びやすい。

小洞穴は後で見え方が変わる場所にしたい

小洞穴は、最初はただの退避先。

狭い。
暗い。
何もない。

でも、ゲームが進むにつれて見え方が変わる場所にしたい。

最初は財宝を隠すだけの穴。
次に、罠や施設が増える防衛拠点。
その後、保護対象や住人が来る場所。
さらに、療養室や食堂ができる場所。

そして、遠征やルートによっては、もっと不思議な場所へ広がっていく。

この変化があると、プレイヤーは小洞穴にだんだんと愛着を持っていける。
最初からすごい拠点ではなく、自分の選択で少しずつ意味が増える場所。

それが今回の魔王領らしさになる。

導入で出さない方がいい情報

導入では、出さない情報も決めてる。

まず、旧領の異常の理由。

なぜ魔力が薄いのか。
誰が何をしたのか。
先代や母親の真相にどうつながるのか。

ここは後でいい。


次に、白冠教会の裏構造。
これも導入では出さない。

序盤では、白冠は遠くにある人間側の救済組織くらいの見え方でいい。

さらに、フォムの深い設定。
フォムは序盤から出してもいいが、懐かしさや安心感くらいに留める。

なぜそう感じるのかは、まだ言わない。
導入で全部を説明すると、後半の伏線が弱くなる。

最初は、分からないまま進んでいい。
分からないけど、生き残るために動く。

そのくらいの出発点が合っている。

導入シーンで見せたいゲームの雰囲気

導入では、プレイヤーにこのゲームのを雰囲気を知らせる必要がある。

このゲームは、魔王になって最初から何でも支配するゲームではない。

弱いところから始める。
必要に迫られて施設を作る。
遠征で拾ったものが拠点に残る。
拠点が育つと、次の遠征や防衛が変わる。
誰を保護するか、誰を捕虜にするか、誰を雇うかで魔王領の性格が変わる。

そして、クロイルはそれらを整理してくれる。

でも、選ぶのはプレイヤー。

この流れを、冒頭の小洞穴スタートで見せたい。

ここまでで見えてきたこと

導入シーンを考えると、このゲームの最初の形がかなり見えてくる。

旧領へ戻ろうとする。
接続に失敗する。
クロイルが小洞穴へ退避させる。

主人公は、自分の弱さと前世記憶の違和感を抱えながら、そこを最初の拠点として受け入れる。

入口を守る。
財宝を置く。
最初の遠征先を選ぶ。

この流れなら、チュートリアルとしても自然に進められる。

物語としても、小洞穴から始まる理由が出る。
そして、後で旧領や先代、母親、黒霧の謎へ戻る余地も残る。

次にやること

次は、導入直後の初期遠征イベントをもう少し具体的に整理していきたい。

黒霧の森。
灰鉱村跡。
旧鉱山。

この3つを、最初の遠征としてどう見せるか。

どの遠征で何を拾うのか。
どの遠征で誰に会うのか。
どの遠征が、どの施設やルートにつながるのか。

このあたりを整理できれば、ゲーム序盤の流れがかなり固まっていく。

まとめ

今回は、AIと一緒に企画している魔王領運営ゲームの制作記録その13として、導入シーンと小洞穴スタートについて整理した。

主人公は、最初から強大な魔王城を持っているわけではない。
本来なら旧領へ接続するはずだった。

でも、旧領の魔力が異常に薄く、魔王核が定着できない。

クロイルは退避先として小洞穴を選ぶ。
そこから、入口を守り、財宝を置き、遠征で素材を集め、少しずつ魔王領を育てていく。

小洞穴は、ただの初期マップではない。
主人公の弱さ、クロイルの判断、世界の異常、巣作りゲームとしての始まりを同時に見せる場所になる。

最初から魔王領があるのではなく、生き残るために整えた小洞穴が、結果的に魔王領になっていく。

この導入にできれば、ゲームの方向性がかなり自然に伝えられる。

次回は、初期遠征の具体的なイベントについて整理していく予定。

AIと魔王領運営ゲームの企画を作り始めた|巣作り×ローグライト制作記その1
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