10月に、YouTubeで新しいチャンネルを始めた。「伴読文庫(ばんどくぶんこ)」という、小説の朗読のチャンネルだ。「伴読」は、隣で一緒に読む、という意味で作った言葉。読む気力はなくても、名作は味わえる。そんなチャンネルにしたい。
最初の作品は、江戸川乱歩の『蟲』。全6回に分けて、10月4日に第1回、6日に第2回を出した。第3回の冒頭は、第2回の数字を見てから書き直した。この記事は、その書き直しまでの話。
「朗読+かみ砕いた補足」というチャンネル
朗読のチャンネルは、もうたくさんある。だから、ただ読むのではなく、今の人がつまずきそうなところに短い補足を挟みながら読むことにした。昔の言葉や時代の背景を、本文の流れを止めない程度に足す。原文は一字も変えず、削らない。
作り方は、AI(Claude)と分担した。
| 作業 | 担当 |
|---|---|
| どこにどんな補足を挟むかの割り振り(全12章で92か所) | AI |
| 原稿、読み方の注意、画面に出す短い注釈 | AI |
| 朗読の録音 | 僕 |
| 字幕の時刻合わせ、背景や人物の絵、動画の書き出し | AI |
| チャンネルの開設、アップロード | 僕 |
画面は、背景と人物の絵と字幕が切り替わる、ノベルゲームのような作りにした。朗読の動画は背景がほとんど変わらないものが多いので、そこを変えたかった。
朗読の速さは、見積もりの3分の2だった
最初にAIが出した見積もりは、1分間に400字だった。この速さで計算すると、全6回で2時間足らず。試しに動画を見ながら読んでみると、とても追いつかない。「かなり早くない?」と聞くと、AIも「速すぎます」と認めた。
AIは、ほかの人が読んだ乱歩の朗読動画で、本文の字数を動画の長さで割って測った。5本のうち4本が、1分間に238〜246字だった。僕が第1回をまるごと読んだら21分42秒、1分間に約260字だった。260字で計算し直した見積もりは21分39秒で、実際の録音とほぼ一致した。
第1回と第2回の数字
10月7日の朝に、2本の数字を並べた。
| 第1回 | 第2回 | |
|---|---|---|
| 長さ | 21分28秒 | 36分25秒 |
| 見た時点 | 公開から2日半 | 公開から22時間 |
| 再生 | 138回 | 67回 |
| 最初の一言 | 「この男、二十七歳。」 | 「前回の第一章では、主人公の柾木愛造が紹介されました。」 |
その日の夕方、第2回の視聴者維持率(動画のどこまで見られているか)のグラフが出た。第1回と比べると、冒頭の落ち方がまるで違った。
| 動画の位置 | 第1回で残っていた人 | 第2回で残っていた人 |
|---|---|---|
| 15秒 | 約75% | 約50% |
| 30秒 | 59% | 約40% |
| 5分 | 25% | 約10% |
(30秒の第1回だけはYouTubeの表示。ほかはAIがグラフの目盛りから読んだ値で、2%くらいの誤差がある)


第2回は、最初の15秒で半分が帰っていた。
誰が見に来ていたのか
AIは、第2回がどこから見られたか(流入元)の画面を読んで、こう見立てた。
- 第2回の再生のうち93%は、YouTubeのおすすめから来ていた(関連動画52%、トップページなどのおすすめ41%)
- 第1回の最後に出した「次の回へ」の案内から来たのは、2.4%だけだった
- 関連動画として並んでいたのは、怪談の朗読や、未解決事件の解説などの動画だった
つまり、第2回を見た人のほとんどは、第1回を見ていない人だった。YouTubeは第2回を、怪談や事件ものが好きな人に試しに見せた。その人たちが押して最初に聞こえたのが、「前回の第一章では…」だった。続きものの2本目だと分かったところで、半分が帰った。
AIは「この組み合わせで説明がつきます」と書いた。ただし、断り書きも付けていた。再生が67回なので、1人がおよそ1.5%にあたる。それでも、15秒で半分という差は偶然とは考えにくい、と。
僕のほうでも、言い切れないところを挙げておく。第1回がどこから見られていたかの数字は、まだ取っていない。第2回は、冒頭だけでなく、内容も、長さも、見た人の層も、第1回と同時に違う。原因を冒頭ひとつに絞れる比べ方にはなっていない。
「#2を隠す」案は、取り下げた
AIは、ほかにできることとして、タイトルの「#2」を後ろに回して、続きものに見えにくくする案も出した。
僕は、こう聞いた。
タイトルを隠して第2回を開いた場合、結局離脱率上がっちゃわない?
続きものだと隠して開いてもらっても、見始めてから「2本目だ」と分かって帰る人が増えるだけではないか。AIは「はい、その心配は当たっています」と答えて、案を取り下げた。すぐに帰られる動画は、おすすめされにくくなるおそれもある。「#2」は、続きものでもいい人を選ぶふるいにもなっている。
問題の言い方を変えた。続きものだと隠すのではなく、2本目から入った人でも、最初の1分で話についていけるようにする。
第3回からは、冒頭を変えた
第3回から第6回の冒頭は、あらすじから始めるのをやめた。第1回の「この男、二十七歳。」のように、引き込みの一言から始める。前回までの話は、そのあとで必要な分だけ短く入れる。
公開済みの第2回は、そのままにしている。第3回が出たら、30秒の時点で何割が残っているかを、第2回の約40%と比べる。それで、この見立てが合っていたかが分かる。
分かったこと
続きものの2本目は、続きものを見てきた人のためだけのものではなかった。2本目を最初に見る人のほうが多い。YouTubeが見せる相手は、こちらが思っている「前回を見た人」ではない。
それと、AIの案に「それって逆効果じゃない?」と聞き返すのは、遠慮しなくていいと思った。AIは数字から筋の通る案を出す。でも、見る人がどう動くかを想像して止めるのは、まだこちらの仕事だ。第3回の数字が出たら、また書く。
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