温泉ブログ(温泉ランド.com)では今、「美肌の湯」という言葉を使うことがある。たとえば佐賀県の嬉野温泉の記事では、「星野リゾートは発表で、嬉野温泉を『日本三大美肌の湯』として知られる温泉と紹介しています」と書いた。誰がそう言っているかを付けて、温泉地の呼び名として紹介する書き方だ。
9月26日までは、この言葉を一切使っていなかった。宿の紹介文に書いてあっても、引用もしなかった。
「なんで美肌って言葉使わないようにしてるの?」
その日の夕方、新潟の温泉地の記事を公開したあと、AI(Claude)がこう書いてきた。全国の温泉地の地図のページにある月岡温泉の紹介文に、「美肌の湯」という言葉が入っている。記事で使わないと決めている言葉なので、直すかどうか決めてほしい、と。
そこで、ふと聞いた。
そういえば、なんで美肌って言葉使わないようにしてるの?
AIは、決めたときの理由を記録から探した。記事の材料には「美肌は書かない」とだけ書いてあり、理由は無かった。たどっていくと、8月に作った2つの文書に「効能は書かない(薬機法)」と書いてあった。そこから、記事でも美肌や効能を書かない決まりになっていた。
「たぶん当てはまっていませんでした」
AIの答えは、こうだった。
いちばん大きな理由は、効き目を確かめようがないからです。調べ直したところ、記録に書いてあった理由(薬機法)は、たぶん当てはまっていませんでした。
薬機法は、薬や化粧品、医療機器などの広告を取り締まる法律だ。温泉宿を紹介する記事は、その対象とは言いにくい。AIは「理由として書いたのは、わたし(か過去のセッション)の思い込みだったと思います」と書いた。
ここは断定しないでおく。法律がどこまで当てはまるかを、専門家に確かめたわけではない。分かったのは、記録に書かれていた理由を、誰も確かめないまま1か月半使い続けていた、ということだ。
それでも成り立つ理由は、3つあった
理由が1つ外れても、「効き目として書かない」こと自体は変わらなかった。AIは、今も成り立つ理由を3つ挙げた。
- 効き目は、国も言い切れないとしている。 環境省の2014年の通知では、温泉の効用は成分だけでなく、温まることや土地の気候、生活の変化などが合わさって起きるもので、「温泉の成分のみによって各温泉の効用を確定することは困難」とされている。この通知は温泉の掲示についての基準で、記事の書き方を決めるものではない。それでも、効き目を言い切れない理由にはなる
- 宿や観光地の宣伝の言葉で、このブログが確かめた事実ではない
- 宿選びの役に立たない。 長野の白馬八方温泉では、記事に選んだ7軒とも、肌や美しさをうたう言葉を紹介文の看板にしていた。全部の宿に付いている言葉は、宿の違いを伝えない
そのうえでAIは、今の決まり(宿の言葉の引用も含めて書かない)をそのまま続けることを勧めた。引用でも、読む人は「効く」と受け取りやすいから、という理由だった。
「かたくなに禁止するまでしなくていい」
僕の答えは、AIのおすすめとは少し違った。
今のままでいいけど、かたくなにそのワードを使うのを禁止するまでしなくていい。温泉地や旅館でそれを謳っているなら、効能としてではなく美肌の湯として宣伝しているようですくらいは使ってもいい。
温泉地が「美肌の湯」を名乗っているのは事実だ。それを読む人に伝えないのは、かえって不親切なこともある。大事なのは、効き目として書かないことのほうだと思った。
AIはこれを、記事を書くときの決まりに足した。
- 「美肌の湯」「美人の湯」は、温泉地や宿が宣伝に使っている呼び名としてなら書いてよい
- 必ず誰が言っているかを付ける(「宿は『美肌の湯』と案内しています」)
- 「肌がきれいになる」「美肌効果」「つるつるになる」のように、入ると体に何かが起きると読める文は書かない
- 7軒とも同じ呼び名を掲げている温泉地では、宿を選ぶ理由には使わない
8月の2つの文書の「薬機法」も、「効き目は確かめられない」という理由に書き直した。
このブログにも、同じ理由を書いていた
書いていて気づいたことがある。8月に書いたこのブログの記事、温泉の行き先を出す診断を作った話にも、こう書いていた。
書くのは泉質名だけにして、効能は書かない(薬機法があるし、そもそも自分が確かめられない)
効能を書かない、という判断は今も変わらない。ただ、括弧の中の前半の理由は、この記事で書いたとおり、確かめていない理由だった。後半の「自分が確かめられない」のほうが、本当の理由に近い。
分かったこと
AIは、決まりの理由を知らなくても、決まりを守り続ける。今回は、守っていた決まりの理由が、確かめられていない思い込みだった。それでも決まり自体は大きく間違ってはいなかったので、誰も気づかなかった。
気づけたのは、「なんで?」と聞いたからだった。AIは記録をたどって、理由が無いことと、書いてあった理由が怪しいことを、そのまま報告してくれた。決まりを足すときは、理由も一緒に書く。理由は、ときどき確かめ直す。それだけで、決まりは少し賢くなる。
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