朝の温泉街の木の掲示板に、白い紙の札が1枚だけ裏返しのまま留められている

温泉ブログ(温泉ランド.com)では、温泉地を1か所ずつ紹介する「1本ガイド」という記事を、AI(Claude)といっしょに作っている。

僕が送る言葉は、ほとんど2つだけだ。「次の温泉地」と送ると、AIが候補を3か所選び、温泉地ごとに「調べ係」のAIを1人ずつ出して、公式の情報を集めさせる。届いた調べ物から、AIが本文と画像を作って下書きに入れる。僕が「公開して」と返すと、公開される。

10月22日の夕方もそうだった。16時38分に「次の温泉地」と送り、17時31分に「公開して」と返した。このとき公開した3本のうち、大分県の日田温泉の記事に、間違いが入っていた。

正直に書くと、この件で僕が言ったのは「次の温泉地」と「公開して」だけだ。間違いに気づいたのも、原因を突き止めたのも、直したのも、AIだった。

公開した記事に書いたこと

日田の記事には、「九州ふっこう応援割」のことを書いた。2026年7月の熊本地震のあと、九州への旅行を応援するための、宿代などの割引だ。

公開した本文には、こうあった。

九州ふっこう応援割は、10月16日に予算がなくなって受付が終わっています。

元になったのは、日田を調べた調べ係の報告だ。大分県の特設サイトのトップに「キャンペーンは終了しました」と出ている、と書いてあった。日田の宿の2軒が、それぞれ「受付終了」「完売」とお知らせを出していることも書いてあった。

本文を書いたAIは、公開の前にこう報告していた。

宿のお知らせには「10月16日から受付」と残っています。でも実際には同じ日に予算がなくなって、受付は終わっています。本文には「終わっている」と書きました。

AIは公開の前に、本文を3つの点で検査している。材料にない事実を書いていないか、使わない言葉がないか、改行の形が合っているかだ。日田の記事は、3つとも0件だった。

ただ、この検査が見ているのは「本文が材料と合っているか」だ。材料のほうが間違っていれば、本文も間違ったまま検査を通る。

翌朝、別の温泉地の調べ物と食い違った

翌23日の朝5時45分、僕はまた「次の温泉地」と送った。AIが選んだ3か所の中に、同じ大分県の湯坪温泉が入っていた。

この朝は、楽天トラベルが前もって予定されていたメンテナンスの最中だった。本文の検査では、楽天の宿ページの中身とも照らし合わせる。だから楽天が止まっているあいだは、本文を書けない。AIは、調べ係の報告が届くのを待っていた。

6時12分、湯坪の調べ物が届いた。そこには、日田のときと逆のことが書いてあった。AIは、こう知らせてきた。

昨日公開した日田の記事には「九州ふっこう応援割は10月16日に受付が終わった」と書きました。ところが今回の調べでは、「大分県の特設サイトに終了の表示はない」となっています。公開済みの記事に関わるので、特設サイトを自分で確かめます。

同じサイトを、1日違いで2つの調べ係が見て、逆のことを言っていた。湯坪の調べ係によると、サーバーに残っていた更新の時刻は10月21日の夕方だった。日田を調べた22日より前なので、そのあいだにページが変わったわけではなさそうだ。

「終了しました」は、前もって隠して入れてあった

1分後、AIから原因の報告が来た。

原因:大分県の特設サイトには、終わったときに出すための「キャンペーンは終了しました」という文字が、画面に出ない形で入っています。日田の調べ物では、それを本文として読んでいました。

ホームページは、画面に見えている文字だけでできているわけではない。あとで使う文字を前もってページの中に入れておき、ふだんは隠しておくことができる。キャンペーンが終わったら、隠していた「終了しました」を表に出す。そうすれば、終わった日に急いで文を書き足さなくて済む、ということだろう。

たとえるなら、お店のレジの引き出しに「本日休業」の札をしまっておくようなものだ。店に来た人には見えない。でも、引き出しの中まで全部読み上げる人がいたら、その人には「休業」と読めてしまう。

調べ係は、ページを目で眺めていたのではなく、ページの中身を文字に起こして読んでいた。そうすると、隠してある文字も、見えている文字と同じように並んで出てくる。それを、トップに出ている文として受け取っていた。

分かった範囲で終わっていたのは、日田の2軒の宿の一部の分だった。1軒は宿に直接予約した分、もう1軒は宿に割り当てられた分が売り切れていた。県全体の応援割は、23日の時点でまだ続いていた。

前の日、調べ係とAIは、ある宿のお知らせの「10月16日から受付」を、古い案内として扱っていた。別の宿の「受付を終了」というお知らせと、県のサイトに隠れていた「終了しました」を合わせて、県全体が終わったと受け取ったことになる。

その朝のうちに直した

AIは、同じ6時13分の報告で、もう記事を直したと書いていた。本文はこう変わった。

九州ふっこう応援割は、亀山亭ホテルの直接予約の分が10月16日に受付を終え、みくまホテルも10月15日に完売と案内しています。

直す前に、AIはWordPressの本文が手元の本文と同じかを確かめていた。公開したあとに手で直した所があれば、上書きして消してしまうからだ。同じだったので、その文だけを差し替えた。直す前の本文も控えに残してある。

あわせて、決めたことを残しておく記録(決定ログ)に、このいきさつを書いた。そして、調べ係に出す指示に、次の一文を足した。

「『終了』などの文字は、画面に見えているかまで確かめる」

決定ログのほうには、「終了」のほかに「完売」「休止」のような、状態を表す言葉も同じように確かめる、と書いてある。

間違ったまま公開されていたのは、22日の17時32分から、23日の朝6時13分までの半日ほどだ。そのあいだに記事を読んだ人がいたかどうかまでは、調べていない。

このあいだ、僕は何も頼んでいない。次に僕が送ったのは、2時間ほどあとの「もどった?」で、楽天のメンテナンスが終わったかを聞いただけだった。応援割の件について、僕からは何も言っていない。

翌日、二日市の記事で効いた

10月24日の朝、福岡県の二日市温泉を調べた調べ係は、報告のはじめにこう書いていた。

「終了」などの言葉は、ページで実際に見える文だけを使った。

福岡県にも、応援割の特設サイトがある。そのトップにも、隠してある「終了しました」が入っていた。AIは、こう報告してきた。

県のサイトには「終了しました」という文がありますが、画面には表示されていない部品の中の文でした。なので使っていません。

二日市の宿の1軒は「受付終了」と案内していた。一方で、県は10月9日から追加の受付を始めていた。宿によって違うので、AIは記事に「予約の前に宿に確かめて」と書いた。日田のときのように、県全体が終わったと書くことはなかった。

僕はこの日も「公開して」と返し、二日市の記事が公開された。

毎朝の見張りとは、別の穴だった

温泉ブログの時事や季節の記事は、毎朝AIに見回ってもらっている(そのときの記事)。見張りが探すのは、書いたあとで外の様子が変わり、古くなった記事だ。

今回は、外の様子は変わっていない。公開した時点で、もう間違っていた。

気づけたのは、次の組にたまたま同じ大分県の温泉地が入っていて、別の調べ係が同じサイトを見たからだ。大分の温泉地が続かなければ、気づくのはもっと遅れたかもしれない。

応援のための割引で「もう終わった」と書けば、まだ使えた人が使わずに予約してしまうかもしれない。見つけたのが偶然だったことは、覚えておきたい。

AIに調べ物を頼む人へ

  • 「終了」「完売」「休止」のような、状態を表す言葉は、ブラウザで開いて画面に見えているかまで確かめる。ページを文字に起こすと、隠してある文字も出てくる
  • 宿ごとの「受付終了」と、制度全体の「終了」は別のことだ。どちらの話なのかを分けて書く
  • 2つの調べ物が逆のことを言ったら、どちらか一方を選ばず、元のページをもう一度見る
  • 「本文が材料と合っているか」の検査では、材料そのものの間違いは見つからない

分かったこと

調べ係は、うそを書いたわけではなかった。ページの中には、本当に「キャンペーンは終了しました」と書いてあった。ただ、それは誰の目にも見えない所にあった。

僕はこの間、「次の温泉地」と「公開して」しか言っていない。それでも記事が直ったのは、AIが食い違いを放っておかず、公開済みの記事に関わると自分で判断して、確かめに行ったからだ。そして、直すだけで終わらせず、次の調べ係への指示に一文を足した。翌日の調べ係は、その一文のとおりに、福岡県のサイトに隠れていた「終了しました」を使わなかった。

おすすめ商品