作業台の上の古いオープンリールのテープ。切られたテープの小さなかけらと、はさみ

温泉ブログ(温泉ランド.com)では、温泉地を1分ほどで紹介するショート動画も作っている。

ナレーションは僕が録る。
そのあとの編集は、AI(Claude)と一緒に作った道具に任せている。
録音を渡すと、言葉と言葉の間を詰めて、字幕を付けて、写真を並べた動画ができあがる。

最近の動画は、ナレーションの語尾まできれいに聞こえる。
ここまで来るのに、1文字ぶんの音を追いかけることになった。

「すが消えてる」

山形県の月山志津温泉のお湯を煮詰めて作る塩を、紹介する動画を作ったときのことだ。

できあがった動画を聞くと、文の終わりがおかしい。
「〜です。」「〜ます。」の最後の「す」が、どの文でも消えている。
「〜で。」「〜ま。」で切れているように聞こえる。

道具の検品では、5項目とも合格と出ていた。
字幕の文字も合っている。
それでも、耳で聞くと明らかに欠けていた。

AIにそう伝えると、最初の返事はこうだった。

推測で直さず、まず測って確かめます。

「す」は、声ではなく息だった

AIが測って分かったのは、こういうことだった。

「です」「ます」の最後の「す」は、ふつうの声とは違う。
のどを震わせず、口から息を「スー」と出すだけの音になっていることが多い。
だから、ほかの音よりずっと小さい。

編集の道具は、ある大きさより小さい音を「無音」とみなして、そこで間を詰める。
ところが、息だけの「す」は、その線より小さかった。
道具は「す」を無音だと判断して、話の途中で切り落としていた。

この日の録音は、いつもと違う録音ソフトで書き出したもので、全体の音量も小さめだった。
それで、いつも以上に切れやすかった。

直す前は25か所中16か所

AIは、声が途切れる直前の音を1か所ずつ測った。
音が小さくなって自然に消えていれば問題ない。
音が大きいまま途中でぷつりと切れていれば、「す」を切り落としている。

動画声が途中で切れていた箇所
月山の塩(直す前)25か所中16か所
月山の塩(直した後)25か所中0か所
次の動画(山中温泉)26か所中1か所
3本目(龍神村)26か所中0か所

直し方は単純だった。

声が終わったと判断した場所から、0.18秒だけ余分に残してから切る。
元の録音を調べると、「す」の息は、道具が「声が終わった」と判断したあと、長いもので0.16秒ほど続いていた。
それより少しだけ長く残すことにした。
動画は55.9秒から59.6秒に、少しだけ長くなった。

その後の動画でも、切れはほとんど0が続いている。
ただ、まれに1か所だけ残る回もある。
完全になくなったわけではないので、毎回数えている。

AIも、一度測る場所を間違えた

調べている途中で、AIは一度、測る場所を間違えた。

字幕の表示が終わる時刻を「声が終わる時刻」として測ったのだが、字幕は読みやすいように、次の文が始まる直前まで出しっぱなしにしてある。
つまり、次の文の出だしを測っていた。

直す前と後で数字が変わらなかったので、おかしいと気づいて測り直した。

AIは、この間違いも自分から報告してきた。
こういう報告があると、残りの数字も信じやすくなる。

前の動画も、同じ切れ方をしていた

同じ測り方で、それまでに公開した4本の動画も調べた。
どれも、同じように語尾を切っていた。

動画声が途中で切れていた箇所
月岡温泉24か所中21か所
水上温泉32か所中27か所
東山温泉28か所中26か所
あわら温泉31か所中18か所

気づかなかったのは、いつもの録音では、切り落とされる長さがもっと短かったからだ。

切れていても、ほとんど聞き取れない程度だった。
月山の動画は、録音の音量が小さかったぶん、切れた部分が長くなって、耳で分かるようになった。

公開済みの動画は、差し替えないことにした。
上げ直すと、それまでの再生の記録が消えてしまう。
直すのは、これから作る動画からだ。

検品では見つからなかった理由

道具には、できあがった動画を文字に起こして、台本と合っているかを確かめる検品がある。
それでも、この欠けは見つからなかった。

文字起こしは、「す」が欠けていても「です」と書き出す。
文字の上では、何も欠けていない。欠けていたのは、音だけだった。

今は、組み立てのたびに「声が途中で切れた箇所は何か所か」を数えて、報告させている。
文字では見えない欠けは、音を測らないと見つからない。

分かったこと

AIに任せた編集は、決めた線の通りに、正確に切る。
その線が「す」を声だと思っていなかったので、正確に「す」を切り続けていた。
検品も、文字で確かめるかぎりは合格を出し続けた。

見つけたのは、できあがった動画を自分の耳で聞いたときだった。
直すのはAIがやってくれたが、「何かおかしい」と気づくところは、まだ人間の耳の仕事だと思う。

Youtubeチャンネル「温泉ランド」