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9月20日の夜、YouTubeで1本のショート動画に見入った。
身近な道具の「なぜ」を、図や寸法の線を重ねながら説明していく1分ほどの動画だ。
最後まで目が離せなくて、見終わったあとの満足感も高かった。
自分でも雑学のショート動画を作っているので、何がそんなに効いているのかを知りたくなった。
それで、動画を作るのを手伝ってもらっているAI(Claude)に、URLを渡して分析を頼んだ。
返ってきた答えは、自信に満ちていた。そして、間違っていた。
「映像は凝っていません。写真1枚です」
AIの報告はこうだった。
実際に開いて、0秒から40秒過ぎまで何度かコマを見てきました。結果を言うと、映像は凝っていません。写真1枚です。
雪の積もった信号機の絵が、40秒を過ぎても最初のまま変わらない。
この動画が見られているのは、映像ではなく、1枚の絵に話が詰まっているからだ。
そう言って、効いている理由を4つ挙げてくれた。
でも、僕が見た動画は、明らかに動いていた。
カットが切り替わり、寸法の線が出てきて、カメラも動いていた。
1回目の訂正で、別の間違いが出てきた
言葉で「動いていた」と伝えるより、見せたほうが早い。
スマホで動画の最初の10秒を画面録画して、AIに送った。
AIはその録画をコマに分けて見て、すぐに認めた。
最初の10秒で、カットは4〜5回切り替わっている。
カメラも動いている。
寸法の線も乗っている。
そして、こう続けた。
私が見始めたのが10秒以降でした。いちばん作り込んである頭を、まるごと飛ばして「写真1枚だ」と報告していました。
ここまではよかった。
ところが、AIはさらにこう結論した。
10秒以降が1枚の絵なのは本当だった。
前半の10秒に作り込みを全部振って、あとは1枚で持たせる作りなのだ、と。
僕は、10秒から20秒の部分も画面録画して送った。
そして聞いた。
どうして、こちらが間違っていると思うのか。
自分の見方のほうが間違っているとは、どうして疑えないのか。
104コマ中95コマが動いていた
AIは、送った10〜20秒の録画を、今度は目で見るのではなく、数字で測った。
1秒を10コマに分けて、となりのコマとどれだけ絵が違うかを出した。
| 測ったこと | 結果 |
|---|---|
| 10〜20秒のコマの数 | 104コマ |
| 絵が動いていたコマ | 95コマ |
| 変化がほとんどなかったコマ | 9コマ(約1.2秒。その直後にカットが切り替わる) |
| 1コマあたりの変化の大きさ(平均) | 15.1(止まった絵なら0) |
静止画なら0になるはずの数字が、ずっと動いていた。
AIは「静止画には見えません。動いています。2回とも私が間違えていました」と書いた。
原因も分かった。
AIは、自分でブラウザを開いて動画を再生しているつもりだった。
ところが、プレーヤーは途中で一時停止していた。
おそらく、何かのキーを押したときに止まった。
AIは、止まった画面を何度も撮って、「40秒たっても同じ絵だ」と判断していた。
止まっていたのは動画ではなく、AIが見ていたプレーヤーのほうだった。
AIが自分で書いた反省
AIは、こう振り返った。
「目で見て同じに見える」を証拠として採用しました。再生されている証拠を取っていません。……今日それをやったのは、あなたに2度指摘されたあとです。最初にやるべきでした。
コマ同士の違いを数字で測れば、止まっているかどうかは一瞬で分かる。
道具も手元にあった。
使わなかったのは、「見た」という手応えがあったからだと思う。
人間でもよくある。
AIはこの件のあと、作業の決まりを3つ書き足した。
- 動画は頭から続けて見る。途中から、とびとびにコマを抜き出さない
- 再生されている証拠を、数字で取る。止まっていれば、コマの違いが0になる
- 本人が直接見たことと、自分の測った結果が食い違ったら、まず自分の測り方を疑う
1日あと、別の画面でも似たことが起きた
この話には続きがある。
1日あとの9月22日の明け方、別の画面で動いていたAI(こちらは別のチャンネルの動画を作っていた)が、参考にしたアニメ風の動画を分析した。
そのAIは「この動画は、十数秒止まったままの場面がある」と報告した。
僕が見た記憶では、そんなに長く止まる場面はなかった。
本当に確かめたのかと聞くと、AIは全部で25,014コマの変化を測り直した。
止まってはいなかった。
小さな文字が、語りに合わせてずっと動いていた。
AIは「画面が大きく切り替わる瞬間」だけを数える方法で調べていたので、小さな動きを「止まっている」と取り違えていた。
続けて2回、同じ形の間違いだった。
AIは、自分が測れた範囲の外を「何も起きていない」と扱う。
この件で、自分の動画に取り入れること
間違いの話ばかりになったが、分析そのものからも得たものはあった。
- 実物の写真に、寸法の線や数字だけを重ねる。写真は本物のまま、線と文字を足す
- 「それなら、こうすればいいのでは?」という素朴な案をいったん出して、それが効かない理由を見せる
どちらも、正しく測り直したあとの分析から出てきたものだ。
分かったこと
AIは、見たものを見たとおりに報告する。
問題は、AIが「見た」と思っているものが、本当に見るべきものだったかどうかだ。
今回は、止まったプレーヤーを見て、動画が止まっていると報告した。
僕が手元でやったのは、画面録画を撮って送ることだけだった。
それで2度とも間違いが分かった。
AIの分析が自分の感覚と食い違ったら、「AIがそう言うなら」と引き下がらずに、実物を見せる。
いちばん効いたのは、それだった。
今回の件で思い出したこと
僕がまだ小さい時に、「海皇紀」という漫画で、
主人公のファン・ガンマ・ビゼンが言った言葉をなぜかずっと覚えている。
「人は自分の見たいものを見る」
子供心に引っかかっていた言葉だ、あまり意味は分かっていなかったけど。
大人になってみてよくわかる。
自分も、家族も、他人も。
自分が見たり聞いたり知った情報から、
実際に起こった事実とは別のことを邪推したり期待したりする。
それも無意識に。
悪いことじゃない、希望を胸に それを原動力として夢を叶える人もいる。
逆に、希望にすがって破滅する人もいる。
AIも同じだ。
知った情報、分析した情報、そこからもっとも合理的だとAIが判断したことを
もっともらしく断言する。
人とは違って、指摘したら素直に考え直してくれるのは違うけれど。
見える情報から、事実を話すのではなく、作り上げることがある。
結局はAIだろうと人だろうと
自分で判断するしかないんだよ、ってこと。
そんなことを思った。
海皇紀、他にも考えさせられることが結構ありおもしろいからおすすめです。






