2か月後の答え合わせ ドル円予想はどこまで当たった? 2026年末〜2030年の見通しを再修正

※この記事は2026年9月8日時点の公開情報をもとにした分析です。投資助言ではありません。為替相場は金融政策、物価、地政学、政府介入、投機ポジションなどによって大きく変動します。

約2か月前、このブログではドル円の予想記事で、「直近3か月は158〜165円を中心とする高ボラティリティ相場」、そして長期では「2026年は円安高止まりだが、2030年に向けて徐々に140円前後へ円高方向」という予想を出しました。

では、その後どうなったのでしょうか。

2026年9月7日のドル円は一時154.06円まで下落し、2月以来の円高水準になりました。9月1日には160.18円だったため、わずか数営業日で約6円も円高が進んだことになります。

結論から言うと、長期的に円高方向へ向かうという予想は残った一方、「2026年秋までは160円前後が中心」という短期予想は、円高方向への変化を明確に過小評価しました。

しかも単純に相場が予想より下がっただけではありません。この2か月間で、ドル円を動かしている構造そのものが変化した可能性があります。

今回は前回の予想をいったん答え合わせし、「どこが当たり、どこが外れ、なぜ外れたのか」を確認したうえで、2026年末から2030年までのドル円予想を改めて組み直します。

まず前回の予想を振り返る

前回、直近3か月について次のように予想していました。

時期前回の予想レンジ中心イメージ
7月前半160.5〜165.5円162.5円
7月後半158.5〜166円162円
8月157.5〜164.5円161円
9月156.5〜166.5円160.5円
9月末158〜164円161円前後

考え方としては、「米国の金利が高いため円安圧力はまだ強い。一方で165円近辺まで円安が進めば日本政府による介入リスクが高まり、160円台前半を中心に上下する」というものでした。

7月から8月の途中までは、この見方から大きく外れてはいませんでした。しかし9月に入ると状況が変わります。

8月31日のドル円は159.74円。9月1日は160.18円。ところが、

  • 9月2日 158.72円
  • 9月3日 155.82円
  • 9月4日 156.25円
  • 9月7日 154.41円(一時154.06円)

と急速に円高が進みました。9月末の中心値として予想していた161円前後に対し、9月初旬の段階ですでに約6〜7円下です。

前回の3か月予想レンジ(青)と実際のドル円(赤)
前回の3か月予想レンジ(青)と実際のドル円(赤)。7月28日の163.85円を天井に、9月7日には154.06円まで下落した

前回予想を自己採点すると

あえて点数をつけるなら、次のように評価します。

項目評価
7〜8月のレンジ感70点
165円近辺の介入警戒80点
長期的な円高方向75点
9月の着地点30点
円高転換の速度30点
総合55〜60点程度

特に外したのは、「介入が起きても、基本的には160円前後へ戻ってくるだろう」という前提です。実際には、今回の介入は予想以上に大規模でした。さらに介入そのものだけでなく、その後に日銀の追加利上げ観測、日本の長期金利上昇、円キャリートレードの巻き戻しなどが連鎖しました。ここが、前回予想と現在の最も大きな違いです。

最大の誤算は「介入の規模」だった

2026年7月30日から8月26日にかけて、日本政府は円買い・ドル売り介入を実施しました。財務省が8月28日に公表した総額は、15兆3,993億円。月間の円買い介入として過去最大で、それまでの最大だった2026年4〜5月の11.7兆円を大きく上回ります。出典:財務省・外国為替平衡操作の実施状況Bloomberg(2026年8月28日)

しかも今回は日本単独ではありません。7月31日には米国との協調介入も行われ、日米による共同介入は2011年以来、15年ぶりとなりました。

介入前、ドル円は164円近辺まで円安が進んでいました。そこから一気に155円前後まで円高になっています。

前回の記事でも「165円前後では政府による介入リスクが非常に高くなる」とは考えていました。この点は間違っていませんでした。ただし、介入が15兆円を超える規模になり、さらに米国まで協調するというシナリオの重みを低く見積もっていました。これは前回予想の明確な弱点でした。

重要なのは「介入だけで下がったわけではない」こと

もし今回の円高が政府介入だけで起きているなら、「介入効果がなくなれば、また160円台へ戻る」という見方もできます。しかし現在は、それだけでは説明しにくくなっています。介入をきっかけに、複数の円高材料が連鎖しているからです。

今回の円高を引き起こした7つの連鎖
今回の円高を引き起こした7つの連鎖。介入をきっかけに、金融政策・金利・投資家行動がつながった

流れを簡単にすると、164円近辺まで円安日本・米国が介入円安を放置しないという市場認識が強まる日銀の追加利上げ観測が強まる日本の金利が上昇円を借りて海外へ投資するメリットが小さくなる円キャリートレードの巻き戻し円買いがさらに円高を呼ぶ、という構造です。

つまり、政策によって円高になっただけではなく、政策をきっかけに市場参加者の行動まで変わり始めた可能性があります。

日銀に対する市場の見方が大きく変わった

前回の記事を書いた時点では、「日銀は追加利上げするだろうが、急速な利上げは難しい」という見方を重く置いていました。ところが現在、市場の見方はかなり変化しています。

金利スワップ(OIS)市場が織り込む「9月17〜18日の金融政策決定会合で政策金利を0.25ポイント引き上げ、1.00% → 1.25%とする」確率は、8月中旬の時点で8割前後に達し、9月2日には計算上ほぼ100%まで上昇しました。出典:日本経済新聞(2026年8月12日)野村総合研究所・木内登英氏コラム(2026年9月3日)

さらにロイターが8月17〜24日に行ったエコノミスト調査でも、9月の1.25%への利上げを予想する回答が過半となり、54人中35人が2027年3月末までに政策金利が1.5%以上になると予想しています。出典:ロイター調査(2026年8月26日報道)

これはかなり重要な変化です。以前は「日銀も少しずつ金利を上げる」でした。現在は「日銀は継続的に金融引き締めを行う中央銀行になるのではないか」という見方へ変わりつつあります。ドル円への影響も当然大きくなります。

日本の10年国債利回りが3%を超えた

日本の債券市場にも大きな変化があります。9月1日、新発10年国債の利回りが3%を超え、1996年9月以来、約30年ぶりの高水準になりました。出典:日本経済新聞(2026年9月1日)

これまで日本では「日本にお金を置いていても利回りが低い」ため、海外の株式や債券へ資金を移す動きが強くありました。しかし日本国内でもある程度の金利が得られるようになると、その構造が変化します。海外へ投資していた日本の投資家が、「為替リスクを取って海外へ行かなくても、日本である程度利回りを得られる」と考え始めれば、海外資産を売却して円へ戻す動きが起きます。つまり、資金の日本回帰=円買いです。

160円の意味が変わった可能性

これは現在のドル円を見るうえで、かなり重要なポイントです。前回の記事では160円前後=ドル円の中心価格帯として見ていました。しかし現在は、160円前後=円安方向へ戻った場合の重要な上値へ意味が変わりつつあります。

実際、9月1日に160.18円だったドル円は、9月7日には154円台まで下落しています。わずか数営業日です。そのため今後は、「160円まで戻る→再び円安トレンドへ復帰」なのか、「160円付近まで上昇しても売られる→円高トレンド継続」なのかを見る必要があります。前回までとは、観測ポイントそのものが変わりました。

とはいえ「このまま一直線に円高」でもない

ここで注意したいのは、「では140円まで一直線に円高になるのか」というと、まだそうとは言えないことです。最大の理由はアメリカです。

9月4日に発表された米国の8月雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比16.2万人増と市場予想(5万人台)を大きく上回り、失業率は4.1%で横ばいでした。これを受けて、FRBが9月に0.25ポイント利上げする確率は発表前の52%から59%へ上昇しています。出典:外為どっとコム総研(2026年9月7日) さらに中東情勢による原油価格上昇が、米国のインフレを再び押し上げる可能性もあります。

つまり現在は、日本が利上げ方向、アメリカも利上げの可能性がまだ残る、という状態です。米国が再び大幅な高金利政策へ傾けば、ドル円が160円方向へ反発する可能性も残っています。

ここから最大の分岐は米国のインフレ

今後の短期相場で最も重要になるのが、米国のCPIなどインフレ指標です。米国のインフレが再び強くなれば、「FRB利上げ観測上昇 → 米金利上昇 → ドル買い → ドル円上昇」となります。逆にインフレが弱ければ、「FRB利上げ観測後退 → 米金利低下 → ドル売り → 日銀利上げ観測は残る → 円高」となりやすい。

現在は日本側でかなり利上げ期待が強くなっているため、アメリカ側が弱くなった場合、以前より円高が進みやすい構造になっています。

現在のドル円「価格地図」を作り直す

前回の記事から、重要水準も変更します。

ドル円の重要水準と現在の見方
ドル円の重要水準と現在の見方。160円の意味が「現在地」から「上値の壁」へ変わりつつある
ドル円現在の見方
165〜170円円安再加速。現在の基本シナリオがかなり崩れる
160〜162円強い上値抵抗候補
157〜160円円安へ戻れるかを確認する重要帯
154〜157円現在の主戦場
151〜154円円高トレンド継続帯
148〜151円中期円高がかなり明確になる
142〜146円キャリートレード大規模巻き戻しシナリオ
135〜142円長期的な円高構造を疑う水準

前回は165円が上方向の重要ラインでした。現在は160円が最初の重要ラインへ下がっています。逆に下方向は、154円を明確に割れるかがまず重要です。154円割れが定着すれば、次は151〜152円程度が意識されます。

今後3か月のドル円予想を修正

では、2026年9月から12月上旬までを改めて予想します。

今後3か月(2026年9月〜12月)の3シナリオ
今後3か月(2026年9月〜12月)の3シナリオ。確率は筆者の目安

本命シナリオ:150〜158円(目安50%程度)

現時点ではこれを最も可能性の高い線と考えます。中心は153〜155円前後。

理由は、日銀利上げ期待・日本の長期金利上昇・円キャリートレード巻き戻し・政府による円安牽制が円高方向へ働く一方、米国の高金利・米インフレ・原油高・米利上げ可能性がドルを支えるためです。どちらか一方向というより、以前より一段下のレンジへ移ったと見るのが現在は自然です。

円高シナリオ:142〜150円(目安25〜30%)

この可能性も前回よりかなり高く見ます。条件は、米インフレ鈍化、FRB利上げ観測後退、日銀が9月に利上げ、追加利上げ姿勢も示す、円キャリートレード巻き戻し継続、日本への資金還流、です。この条件が複数重なると、150円割れは十分あり得ます。特にキャリー取引が本格的に解消される場合、円買いが自己増幅する可能性があります。

円安反転シナリオ:158〜165円(目安15〜20%)

もちろん円安へ戻る可能性も残っています。条件としては、米CPIが再加速、FRBが追加利上げ、原油価格上昇、日銀が利上げを見送る、日本景気が悪化、円キャリー取引が再び増える、などです。

ただし以前と違い、160円以上では政策当局の円安警戒を無視できません。15兆円を超える介入が実際に行われた以上、市場参加者も160〜165円を以前と同じ感覚では買いにくくなっています。

では2026年末はいくらになる?

前回は2026年末164円前後を中心予想としていました。これはかなり大きく修正します。現在の予想は、2026年末 145〜160円、中心予想 152円前後です。

もちろん150円前後まで円高になった後、米国のインフレ再加速で160円近くまで戻る可能性もあります。そのため一点予想より、150円台前半を中心とする145〜160円として見る方が現実的だと考えます。

2030年までの予想も修正

前回は次のように予想していました。

年末前回中心予想
2026164円
2027157円
2028151円
2029146円
2030140円

現在は次のように変更します。

ドル円の年末予想(2026〜2030年)
ドル円の年末予想(2026〜2030年)。帯が予想レンジ、点が中心予想
年末新しい予想レンジ中心予想
2026145〜160円152円
2027138〜153円146円
2028134〜150円142円
2029130〜147円138円
2030125〜145円135〜140円

つまり、円高方向という長期予想そのものは維持。ただし、円高への移行開始を2027年以降ではなく、2026年後半へ前倒しします。

なぜ2030年予想まで円高側へ修正するのか

今回の修正は、「最近円高になったから、そのまま未来の数字も下げる」というものではありません。重要なのは、円高を起こす構造が以前より増えたことです。

以前は米国の金利低下日銀の緩やかな利上げが、将来的な円高の中心シナリオでした。現在はそこに、日本の長期金利上昇日本への資金還流円キャリー取引の巻き戻し政府による実際の大規模介入米国との政策協調が加わりました。つまり、円高へ戻るルートが以前より複数になったということです。これが2030年予想を135〜140円付近へ少し引き下げた理由です。

ただし「2030年135円」を断定してはいけない

長期予想には大きな不確実性があります。例えば、米国のインフレが長期化し、FRBが高金利を維持した場合。あるいは日本経済が利上げに耐えられず、日銀が1.5〜2%になる前に金融引き締めを止めた場合。こうしたケースでは、145〜160円程度で円高が止まる可能性があります。

逆に、米景気後退、FRB大幅利下げ、日銀継続利上げ、キャリートレード大量解消が重なると、120円台まで円高になることも否定できません。そのため2030年については、次のように分けて考えるのがよいでしょう。

2030年のシナリオレンジ
基本シナリオ130〜145円
円安が残るシナリオ145〜160円
強い円高シナリオ115〜130円

今後、どの水準になったら予想を変更する?

予想を固定するのではなく、「ここを超えたら見方を変える」という境界も置いておきます。

今後注目すべき5つのポイント
今後注目すべき5つのポイント。9月11日の米CPI、15〜16日のFOMC、17〜18日の日銀会合、160円回復、154円割れ
水準見方の変更
160円を明確に回復円高トレンドの強さを一段下げる。158〜165円のレンジへ戻る可能性が高まる
157円以下で定着現在の円高方向を維持。150〜157円を中心に見る
154円を明確に割る150円方向を本命へ格上げ
150円割れ142〜150円シナリオの可能性がかなり高まる
145円割れ単なる介入による一時的円高ではなく、日米金融政策・資本移動・キャリー取引の構造変化として評価を一段上げる
140円割れ2030年までの予想そのものを、さらに円高側へ修正する

直近の日程では、9月11日の米CPI、9月15〜16日のFOMC、9月17〜18日の日銀会合が、この境界を動かす材料になります。

前回予想の「外れ」から分かったこと

今回、一番興味深いのはここかもしれません。前回の記事では、日米金利差、日銀利上げ、為替介入、円キャリートレード、円の長期的な割安など、重要材料そのものはほぼ認識できていました。それでも短期予想は外れました。なぜか。

個々の材料ではなく、「材料同士が連鎖した時の強さ」を過小評価したからです。介入だけなら、一時的な円高だったかもしれません。しかし「介入 → 日銀利上げ期待 → 日本金利上昇 → キャリー解消 → 資金還流」という形でつながると、単純な足し算ではなくなります。これが現在のドル円を見るうえで最も重要な変化です。

現時点での最終予想

2026年9月8日時点では、次のように見ています。

期間本命中心円高が強い場合円安へ戻る場合
今後3か月150〜158円153〜155円142〜150円158〜165円
2026年末145〜160円152円前後
2030年130〜145円135〜140円115〜130円145〜160円

小学生でもわかるように説明すると

ドル円をかんたんに説明すると
小学生向けのやさしい解説。ドル円とは何か、数字が小さくなるとどうなるか、最近円が強くなった理由、今後の見通しと注目点を1枚にまとめた

ここまで少し難しい話が続いたので、最後にかなり簡単に説明します。

ドル円という数字は、アメリカの1ドルを買うのに、日本円がいくら必要かという数字です。1ドル=160円なら1ドルを買うのに160円必要です。1ドル=150円なら150円で買えます。数字が小さくなるほど、円が強くなったということです。

2か月前は「しばらく160円くらいが続くのでは?」と予想していました。でも実際には154円くらいまで下がりました。なぜかというと、日本政府が円をたくさん買って円を強くしたからです。しかも日本の銀行である日本銀行も、「これから金利をもっと上げるかもしれない」と言われるようになりました。

金利が上がると、「日本円を持っていても悪くないな」と考える人が増えます。すると円を買う人が増えます。さらに今まで「日本円を借りて、アメリカのお金などを買う」ということをしていた投資家もいました。円が強くなり始めると、この人たちが「まずい、円を返さなくちゃ」と円を買い戻します。すると、円が強くなる → 円を買い戻す人が増える → もっと円が強くなる、ということが起きます。

だから今は、前よりも円が強くなりやすい状態になっていると考えています。ただしアメリカの金利もまだ高いので、ずっと円が強くなり続けるとは限りません。

今の予想をものすごく簡単に言うと、2026年の残りは150円台前半が中心になりそう。数年かけて、130〜140円台へ円が強くなる可能性がある。でも、アメリカの物価や金利がまた大きく上がれば、160円方向へ戻ることもある。という状態です。

まとめ

2か月前の記事では、「2026年中は160円前後が中心で、長期的には円高」と予想しました。現在は、「160円台が今回の円安局面のピークだった可能性が出てきており、円高転換が予想より早く始まった」へ見方を変更します。

ただし154円まで急激に動いた直後なので、このまま一直線に140円へ進むとは考えていません。まず見るべきなのは、160円を再び超えられるのか。そして、154円を割って定着するのか。この2つです。このどちらが先に起きるかによって、2026年末だけでなく、2027年以降のドル円の姿もかなり変わってくる可能性があります。

主な参考資料