「不眠症 原因」でGoogle検索をしたときのことだ。
いちばん上にAIの答えが出る。
ストレス、生活習慣、体の病気、薬の副作用、環境。
なるほど。
そして下にスクロールすると、検索結果のサイトが並んでいる。
1件目、ストレスと生活習慣。
2件目、ストレスと環境。
3件目——ぜんぶ、AIがもう言ったことだった。
10件見ても、AIの要約に載っていない話をしているサイトは、ひとつもなかった。
そういうものを可視化するchromeの拡張機能を作った。
『ソトガワ』。
Google検索のAIの答えが「どのサイトから作られたか」に印をつけて、逆に「AIが言っていないことを言っている結果」を浮かび上がらせる。
無料で、インストールは2クリック。
AIの答えは、Webからできている
最近、検索しても青いリンクを押さなくなった。
AIが上でまとめてくれるからだ。便利だと思う。
ただ、あるとき妙なことに気づいた。
そのAIの答えは、誰かが書いたWebページから組み立てられている。
つまりAI検索は、Webサイトの中身を材料にして、Webサイトへの訪問をいらなくする仕組みだ。
読まれなくなったサイトは、いずれ書かれなくなる。
材料が痩せたら、AIの答えも痩せる。
最初は「サイト側がAIに条件をつける方法はないか」を調べた。
ページに「無断でAIの回答に使うな、使ったら使用料」と書いておいて、法的に通るのか。
結論から言うと、日本では今のところ通らない。
一方的に書いた文言は契約にならないし、日本の著作権法はAIの学習にかなり寛容にできている。
守れないなら、逆をやることにした。AIが拾ったものを避けるのではなく、AIが拾わなかったものを探しに行く。
要約に収まりきらない一次情報、実際に手を動かした人の記録、多数派に混ざらない意見。
AIが平らにならしてしまう「外側」だ。
ソトガワがやること
インストールしてGoogle検索をすると、3つのことが起きる。
- AIの答えの引用元になったサイトに「AI引用元」の印がつく(薄く表示にもできる。もう読んだ内容だから)
- AIの答えと中身がかぶっていない検索結果に、緑の「AIの外側」バッジがつく
- AIの答え自体を「隠す」ボタンで畳める。押した状態は次の検索でも覚えている
かぶっているかどうかは、AIの答えの文章と各サイトの説明文を突き合わせて機械的に測っている。
だから冒頭の「不眠症 原因」のような検索では、外側バッジが0件になることがある。
それはバグではなく、診断だ。
この検索結果には、AIを読めば済む情報しかない、という。
ちなみに通信は一切していない。
検索語も履歴もどこにも送らないし、広告も入れていない。
全部ブラウザの中だけで動く。
作り方はいつも通り、ただし今回は共犯がいる
実装はAI(Claude)に任せて、自分は使ってはダメ出しをする係。
この座組も3作目になる。
思いつきの雑談から始めて、二日後にはChromeウェブストアの審査に出していた。
ただ今回は、直す相手がGoogleの検索画面という生き物だった。
公開前のテストで、AIの答えを隠したはずなのに本体が消えず、なぜか「関連する質問」の欄が消える、という現象が起きた。
スクリーンショットを2枚並べて眺めて、ようやく犯人がわかった。
「関連する質問」の折りたたみの中に、開くとAIの回答が出るタイプの隠れ見出しがあって、拡張機能がそっちを本体だと思い込んでいたのだ。
AIの答えに印をつける道具が、隠れたAIの答えに騙されていた。
皮肉が効きすぎている。
いまは「画面に見えている本物」だけを掴むように直してある。
とはいえGoogleが画面の作りを変えれば、また壊れる日が来る。
そのときは直して更新するので、動かなくなっていたら教えてほしい。
広告を入れない理由
この拡張機能は無料で、これからも無料のままにする。
広告も入れない。
広告は「あなたがどこを見て何を検索したか」を追いかけることで成り立っていて、AIの外側を探す道具があなたの行動を売っていたら、さすがに筋が通らないからだ。
続けるための支えは寄付だけにした。
使ってみて面白かったら、公式サイトからコーヒー1杯ぶん投げてもらえると、次の更新が少し早くなるかもしれない。
外側には、まだ誰かの言葉が残っている
AIの答えは便利だ。
それは否定しない。
ただ、あの要約の下には、要約に入りきらなかった誰かの実験や、失敗談や、少数派の言い分が、まだ誰かの言葉のまま並んでいる。
ソトガワは、そこへ降りていくための小さな入口だ。
まずは何か、答えの分かりきっていない疑問で検索してみてほしい。
緑のバッジがついた結果は、AIがあなたに教えなかったことを言っている。






